KAKAMU

聞く回路とは

英文を聞けるとは、聞いた音を意味に変換して理解できることです。”There is an apple on the table.”という音を聞いた時、あの赤い丸い果物がテーブルの上に置いてある様子をイメージ化できれば聞けていると言えます。私たちは聞いた音を多かれ少なかれイメージ化することで理解しています。

イメージ化とは、あらゆる情報を視覚情報に変換することを言います。頭の中で擬似的に視覚情報を見ている・思い浮かべている状態のことだと理解してください。思い浮かべているイメージはぼんやりしていて構いません。話す側が頭の中で描いている視覚情報を、聞く側が大差なく頭の中に再現してイメージ化できた場合は、コミュニケーションが成立している(=伝わっている)という状態になります。例えば、”There is an apple on the table.”と発言した人は、あの赤い丸い果物がテーブルの上に置いてある様子を思い浮かべながら(または実際に見ながら)発言しており、それを聞いた人も同じくあの赤い丸い果物がテーブルの上に置いてある様子をイメージ化できていれば、大体(=りんごの大きさやテーブルの形については視覚情報に差異が生じているかもしれないが)コミュニケーションは成立しているということです。

また、「痛い」や「寒い」といったより抽象的な概念も、例えば「誰かに叩かれている状況」や「雪が降っている状況」などの視覚情報を思い浮かべていると考えてください。ちなみに視覚情報は同時にたくさんあることもあります。「寒い」の場合、「雪が降っている状況」、「毛布にくるまってブルブル震えている状況」、「冬に屋外に出る瞬間の状況」などが同時にパッと見えるという具合です。全く同じ発言(=音)を聞いてもそれを変換した視覚情報は人によって異なるため、コミュニケーションに齟齬が生じることは日常茶飯事です。いわゆるバイアスもここから生じることが頻繁にあります。そのため、哲学や数学など特に抽象的な議論を複数人で進める必要がある場合には、頻繁にお互いの頭の中を確認しながら進める必要があるのは当然と言えます。

余談ですが、物理的な音を聞き取れるかと意味が理解できるかを区別して、まずは物理的な音を聞き取れるようになりましょう、そのためにリエゾンを理解しましょうという英語学習法の本がたまにあります。言っていることは100%誤っている訳ではありませんが、物理的な音を聞き取れるかと意味が理解できるかを区別することも、厳密には無数にあるリエゾンのパターンを覚えることも、あまり実用的とは言えません。前者については、聞き取れなかった物理音を文脈から頭の中で補うことは母語話者でもよくあるので、総合的に文全体を理解できるようになることの方が優先度が高いです。後者は、毎回「あ、これあのパターンだ!」とかやってる暇はありませんし、そんなことしなくても繰り返しトレーニングしていれば自然にわかるようになるので心配いりません。

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さらに詳しい内容は、書籍「言語を、鍛えろ。」をご覧ください。