イスタンブールで博物館巡り
そもそも
イスタンブール滞在記2022のスピンオフ。
イスタンブールにあるいくつかの博物館を巡ってみた。
大宮殿モザイク博物館
大宮殿モザイク博物館は、かつてこの場所にあった皇帝の住居「コンスタンティノープル大宮殿」を飾っていたモザイク画を展示する博物館。
コンスタンティノープル大宮殿は、コンスタンティヌス大帝がローマからコンスタンティノープルに遷都した際に建設されたのが最初で、6世紀にニカの乱によって破壊された後、再建され拡張された。10世紀頃には荒廃しはじめ、13世紀初頭に第4回十字軍によってコンスタンティノープルが陥落すると、略奪などもあって完全に荒廃した。オスマン帝国時代にはイスタンブールを再建する際に大宮殿のほとんどが取り壊された。
時を経て20世紀前半に発掘調査によって、この場所の地下から4-6世紀頃に大宮殿を飾っていたとされる大量のモザイク画が発見された。発見されたモザイク画のモチーフが、モザイク画でよく見るキリストのイコンなどの宗教的なものではなく、当時の人々や動物たちが織りなす日常的な風景なのが非常に興味深い。しかも自由闊達で遊び心満載な可愛いモザイク画が多かった。
イスタンブール考古学博物館
イスタンブール考古学博物館は、オスマン帝国の広大な版図から収集された、古代オリエント・ギリシャ・ローマ時代の文化財を主に展示する博物館。オスマン帝国近代化政策の一環として19世紀末に開館した。過去に訪れた博物館の中で展示が最も洗練されていて分かりやすい博物館の一つ。
玄関ホールを飾る高さ約4mのベス神像(紀元前7-6世紀頃)。キプロスで出土。
クーロス(アルカイック期の裸の若い男性像)の頭部像(紀元前6世紀頃)。ギリシャのサモス島で出土。
レスラーとミュージシャンのレリーフ(紀元前6世紀頃)
飛ぶニケのレリーフ(紀元前5世紀頃)
マウソロス霊廟の獅子像(紀元前4世紀)。マウソロス霊廟は、トルコ南西部のカリア(現在はボドルム)を支配したマウソロスとその妻のためにに建設された霊廟。
古代ギリシャ時代の金銀細工(紀元前3-4世紀)
アレクサンドロス大王の像(紀元前3世紀)
男性像(紀元前2世紀)
古代ギリシャの女性詩人サッポーの頭部像(2世紀)
ハドリアヌス帝の像(2世紀)
ローマ神話の神々の彫刻群。
古代都市トロイの遺跡の地層を再現した展示。
古代ギリシャ時代の石棺(紀元前8-6世紀頃)
メデューサの頭部を模した陶器の一部(紀元前6世紀頃)
古代ギリシャ時代の金細工(紀元前3世紀頃)
古代ギリシャ時代の石棺(紀元前4世紀頃)。レバノンのシドン(サイダ)で出土した。東アジア感満載なのはなぜだ。
アレクサンドロス大王の石棺
アレクサンドロス大王がイッソスの戦いでアケメネス朝ペルシャと戦う様子が彫られた石棺(紀元前4世紀頃)。レバノンのシドンで出土した。保存状態が極めて良好で、当時鮮やかに彩色されていたことが確認できる非常に貴重な遺物。
嘆き悲しむ女性たちの石棺
嘆き悲しむ女性たちが神殿の列柱の間に彫られた石棺(紀元前4世紀頃)。レバノンのシドンで出土した。この石棺も当時鮮やかに彩色されていた跡が残っている。
リュキアの石棺
蓋上部に施されたカーブが特徴的な石棺(紀元前5世紀頃)。現在のアンタルヤ周辺に存在したリュキア人の墓に似ているため「リュキアの石棺」と名付けられた。レバノンのシドンで出土した。側面にはライオンと猪を狩猟する様子、ケンタウロスとスフィンクスの戦いなどが彫られている。
古代ギリシャ時代の石棺(紀元前4世紀頃)。レバノンのシドンで出土した。
ローマ帝国時代の石棺群
立体的すぎるローマ帝国時代の石棺群(2-3世紀頃)。
シダマラの石棺
長さと高さは3mを超え、重さは30tを超える、現存する世界最大級の古代ギリシャ時代の石棺(紀元前3世紀頃)。トルコ南部カラマン県周辺にかつて存在した古代都市シダマラで出土した。1882年に石棺を発見したイギリス軍人が石棺上部にあるエロスの頭部を切り取ってイギリスに持ち帰った。1898年に石棺が村人によって再発見されると、1901年に長旅の末イスタンブールへ運ばれた。エロスの頭部は、1933年にかのイギリス軍人の娘によってロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館に寄贈され、その後交渉の末イスタンブールへと運ばれ、ようやく元の石棺に戻されることになった。
マグネシアのアルテミス神殿
トルコ西部にかつて存在したイオニア地方の古代都市マグネシアのアルテミス神殿の遺物群(紀元前3-2世紀頃)。
閉ざされた階段
展示室最奥部にある階段。かっこええ。
トルコ・イスラーム美術博物館
トルコ・イスラーム美術博物館は、中世以降のトルコおよびイスラーム圏の美術工芸品を展示する博物館。スルタンアフメット広場の西にある。建物は元々、16世紀にスレイマン1世に仕えた大宰相パルガル・イブラヒム・パシャの邸宅だった。
アルトゥク朝(1101-1409)の工芸品。アルトゥク朝は、オグズ族系トゥルクマーンによるセルジューク朝系アタベク政権だそうです(どういう意味)。
マムルーク朝(1250-1517)の工芸品。マムルーク朝は、奴隷軍人マムルーク出身者たちがクーデターによってアイユーブ朝を滅ぼして建国したイスラーム政権。カイロを首都としてエジプトやシリアを支配した。
ティムール朝(1370-1507)の工芸品。ティムール朝は、モンゴル系部族出身のティムールが建国したイスラーム政権。サマルカンドを首都として中央アジアや西アジアを支配した。1402年にアンカラの戦いでオスマン帝国を破った。
サファヴィー朝(1501-1722)の工芸品。サファヴィー朝は、神秘主義を信奉するサファヴィー教団がイランに建国したシーア派イスラーム政権。アッバース1世時代の最盛期には新都イスファハーンを築き、貿易によって大いに繁栄した。
カージャール朝(1796-1925)のクルアーンの写本。カージャール朝は、トルコ系民族がイランを統一して建国した政権。イギリスやロシアの帝国主義の餌食となった。
世界有数の貴重な絨毯コレクション。
オスマン帝国時代に普及した伝統的な影絵人形劇カラギョズ。インドネシアの影絵人形劇ワヤン・クリと似ている。
テオドシウスのオベリスクとスルタンアフメット・モスクを望む。スルタンアフメット・モスクの6本のミナレットを同時に綺麗に眺められる場所は意外と少ない。
参考書籍
古代メソポタミア全史 シュメル、バビロニアからサーサーン朝ペルシアまで