KAKAMU
BlogTag

ヴェッキオ宮殿に行ったら圧倒された

2022.07.15

そもそも

フィレンツェ滞在記2022のスピンオフ。

ヴェッキオ宮殿は、13-14世紀に建築家アルノルフォ・ディ・カンビオ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂も設計)によって建設され、後に増改築が重ねられた宮殿。フィレンツェ共和国の政庁舎やメディチ家の邸宅として使用され、現在もフィレンツェ市庁舎として使用されている。映画『インフェルノ』の舞台としても知られる。

シニョリーア広場

ヴェッキオ宮殿前の広場。16世紀に制作されたコジモ1世の騎馬像やネプチューンの噴水などが見える。ドミニコ会修道士サヴォナローラが教皇や貴族の奢侈を批判して本や贅沢品を燃やした(虚栄の焼却)のもこの広場。ローマ時代にはフォルム(公共広場)だったという。 Blog Image

ローマ時代またはルネサンス期に制作された彫刻が立ち並ぶランツィの回廊。 Blog Image

ジャンボローニャ『サビニの女たちの略奪』 Blog Image

外観

いかにもボスが住んでそうな外観。 Blog Image

ヴェッキオ宮殿の入口にはミケランジェロのダビデ像のレプリカ。 Blog Image

中庭

入口入ってすぐのところにある、ミケランジェロが装飾を手がけたとされる中庭。中央の噴水にはアンドレア・デル・ヴェロッキオ(レオナルド・ダ・ヴィンチの師匠)作の『イルカを抱くキューピッド』のレプリカ(オリジナルは宮殿内にある)が飾られている。 Blog Image

500人大広間

まずは最初にして最大の見どころ「500人大広間」。15世紀末にサヴォナローラの下で建築家シモーネ・デル・ポッライオーロ(通称クロナカ)によって建てられ、16世紀中盤にコジモ1世の下でジョルジョ・ヴァザーリによって拡張された。「500人」は共和制時代に定員500人の議会を開催するための大広間だったことに由来する。

壁画も天井も迫力が半端ない。それなりに宮殿の大広間を見てきたがここが圧倒的に一番かもしれない。 Blog Image

ジョルジョ・ヴァザーリによって制作された天井。サヴォナローラによって一時は失脚させられ後に復権したメディチ家がその権力を誇示するために作らせたという。ジョルジョ・ヴァザーリ優秀すぎるし働きすぎだろ。 Blog Image

東西の壁にはそれぞれ3点の連作となっている、ジョルジョ・ヴァザーリの『ピサ攻略』と『シエナ攻略』。元々ジョルジョ・ヴァザーリがこの大広間を手がける50年近く前に、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロが、サヴォナローラ処刑後の政権を握ったピエロ・ソデリーニ(とその下で働いていたマキャヴェッリ)から依頼を受けて、東西の壁(正確な位置は不明)にそれぞれ『アンギアーリの戦い』と『カッシーナの戦い』を描いていたが頓挫して未完に終わり、その未完の絵画の上からジョルジョ・ヴァザーリが現在見られる絵画を描いたとされている。 Blog Image Blog Image

『シエナ攻略』の一番右の絵画(『マルチャーノ・デッラ・キアーラの戦い』)の中に残された「CERCA TROVA(探せ、さすれば見つかる)」という文言。肉眼で文字が書かれていることがかろうじて確認できる程度の大きさ。マウリツィオ・セラチーニ教授はこの文言やジョルジョ・ヴァザーリが書いた『美術家列伝』などをヒントに、この絵画の裏に『アンギアーリの戦い』が隠されていると考え、最新技術を駆使した調査を行った。その結果、最初の調査で絵画の裏に空間があることを確認し、また次の調査で顔料(何の絵かまでは不明)を確認したという。その後いざこざがあったらしく真偽は不明。

マウリツィオ・セラチーニ教授によるスピーチ動画:The secret lives of paintings Blog Image

ミケランジェロ『勝利』 Blog Image

フランチェスコ1世の書斎

500人大広間から入れる小さな書斎。この書斎でコジモ1世の子フランチェスコ1世が錬金術の研究を行なっていたとされ、錬金術に関係する四大元素の空気・水・火・土をテーマにした絵画が部屋中を飾っている。これらの絵画はマニエリスムの傑作と言われている。この書斎は寝室に通じる隠し扉なども備えている。 Blog Image

ロレンツォ・イル・マニーフィコの間

メディチ家の最盛期を築いたロレンツォ・イル・マニーフィコの偉業を讃える絵画が飾られている。グロテスク模様の壁。 Blog Image

レオ10世の間

レオ10世(ロレンツォ・イル・マニーフィコの次男ジョヴァンニ)の生涯を描いた絵画が飾られている。 Blog Image Blog Image

四大元素の間

2階に上がるとまずあるのが四大元素の間。錬金術に関係する四大元素の空気・水・火・土をテーマにした絵画が飾られている。

『空気』(これだけ天井に飾られている) Blog Image

『水』 Blog Image

『火』 Blog Image

『土』 Blog Image

サトゥルヌスのテラス

街並みを一望してリフレッシュできるテラス。 Blog Image

イルカを抱くキューピッド

アンドレア・デル・ヴェロッキオの『イルカを抱くキューピッド』。中庭にあった彫刻のオリジナル。カワイイ。 Blog Image

500人大広間(上から)

「こういうギャラリー部分、学校の体育館にあったなー」 Blog Image

アンギアーリの戦い

前述の『アンギアーリの戦い』の模写(の模写かも)。 Blog Image

ダンテのデスマスク

本物ではない可能性が高いというデスマスク。真偽は不明。映画『インフェルノ』に登場した。 Blog Image

謁見の間

壁画はフランチェスコ・サルヴィアーティの『カミッルスの物語』。カミッルスはロムルスに次ぐローマ第二の創建者と謳われる政治家。 Blog Image

百合の間

マイアーノ兄弟によって美しい装飾が施された天井とドメニコ・ギルランダイオによって描かれたフレスコ画。 Blog Image

部屋の隅にはドナテッロの『ユディトとホロフェルネス』。壁を覆う青と金の紋章は、フィレンツェの紋章と見せかけてフランス王家の紋章(フルール・ド・リス)でフランス王家とのつながりを表現している。ひっかけ問題。 Blog Image

この部屋の窓からはサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂をとジョットの鐘楼を眺めることができる。なんかやたら手が込んでる部屋だな。 Blog Image

地図の間

世界中の各地域の地図が壁一面に飾られている。地図は数学者・地理学者のイニャーツィオ・ダンティが作成した。実は地図一枚ずつがキャビネットの扉になっていてパカっと開き、さらにそのうちの一つは隠し扉だという。忍者屋敷やん。部屋の中央に巨大な地球儀があったが、修復中でそこだけ撮影禁止だった(がおじさんが撮影しててめちゃくちゃ怒られてた)。 Blog Image

感想

部屋ごとの個性と哲学(こだわり)が強くてずっと楽しかった。個人的に宮殿ランキングTOP3に入る。

参考書籍

チェーザレ 破壊の創造者

美しいフィレンツェとトスカーナの小さな街へ

西洋美術史入門

世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」

ルネサンスとは何であったのか―塩野七生ルネサンス著作集1―

ルネサンス 歴史と芸術の物語

イラストで読む ルネサンスの巨匠たち

ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論

「イタリア」誕生の物語

関連記事

フィレンツェ滞在記2022

#ヨーロッパ#イタリア#宮殿#聖地巡礼#おすすめ